避難所をめぐる現状と課題

災害後ー避難所での生活

●女性のための物資が足りない!

 前述したように、避難所に行けば物資が揃っているとは限りません。内閣府の「避難所の運営等に関する実態調査」によると、避難所内に男女共同参画の視点を取り入れ、要配慮者に配慮して物資の備蓄を行なっている自治体でも、生理用品の備蓄は約半数、離乳食の備蓄は1割ほどにとどまっています。女性に配慮した物資や設備がある避難所はとりわけ少ないのです。

 例えば、女性更衣室や授乳室がないと、女性は周りを気にしながら布団の中で着替えや授乳をしなければいけません。

 女性専用の物干し場はプライバシーに加え、防犯の観点からも必要ですが、設置されない避難所では、男性が気になって自分の下着を干せない女性も多くいます。

 女性専用物資は、配布方法に注意する必要があります。もし配布されていたとしても、女性による配布でないともらいに行きづらく、ニーズがあるのに活用されなくなってしまうからです。

 また、女性への配慮は女性の年齢を問わず行われるべきで、若い女性に限ったことでないということを忘れてはなりません。

 このように、女性のための物資が足りないことが、避難所で女性が避難弱者になりやすいと言われている原因であると考えられます。

 過去の災害では避難所でどの程度女性に配慮した取り組みがなされたのか、熊本地震を例に見てみましょう。このグラフを見てください。

取り組み時期
内閣府男女共同参画局「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査報告書」 http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/kumamoto_h28_00.pdf を参照し独自で作成

 これは、内閣府男女共同参画局が、男女共同参画の視点を反映した取り組みの実施時期を調査した結果を示したものです。調査対象は、指定避難所の設置・運営を行った34市町村のうち被害が軽微だった市町村を除いた24市町村です。各市町村の中に複数の避難所がありますが、最も早く取り組みを行った避難所の実施時期を用いています。

 グラフから、女性更衣室や授乳室を災害発生から少なくとも1ヶ月間設置していない避難所が半数以上あることがわかります。また、女性用物資が女性によって配布されていない避難所は半数以上にのぼっています。このことは、避難所運営の中心を担うことが多い自治会のリーダーのほとんどが男性であることと関連があると考えられます。

 このように、避難所での女性の立場は弱く、女性への配慮は軽んじられる傾向にあります。

●性暴力がなくならない!

 災害時には女性や子供に対する暴力が起こるリスクが高まることは国際的に知られています。

 東日本大震災女性支援ネットワークが2013年に公表した報告書によると、女性や子供に対する暴力(DVを除く)がふるわれた場所は、避難所が最も多くなっています。加害者は避難所住人・リーダーが最も多いです。しかし、震災支援者・ボランティアから暴力を振るわれることもあり、本来、被災者を手助けする立場であるはずのボランティアの中に善意でない目的の人もいると言えます。また、震災・津波などで夫を亡くす、失業する、家財を失くすなどして困っている女性に、食料や生活物資を分け与えたり住居を提供するなどした見返りに性行為を要求するという事例も確認されています。

●女性の負担が重い!

 災害時には性別による固定的役割分担が平時よりさらに強化されると言われています。(男女共同参画局「男女共同参画の視点からの防災・復興の取り組み指針」より)しかし、それを防ぐ取り組みを実施する避難所はわずかです。性別による固定的役割分担と聞いてピンと来ない方もいるかもしれません。性別による固定的役割とは、男性はがれきの処理をし、女性は炊き出しを割り当てられるというように、避難所での役割が性別によって決められることを指します。

「男性は作業の時間が決まっているのに、女性は避難所にいる全員分の炊き出しで一日中食事の用意や片付けに追われ、その上子どもの面倒や両親の介護も行わなければいけない。」

「男性には日当が出るのに、女性には出ない。」

 男女で仕事の評価が異なるという不平等が生じてしまっているのが現状です。