避難所をめぐる現状と課題

 ここでは、災害前・災害対応・災害後の避難所・インタビューという4つの視点から、避難所の現状や課題を見てみましょう。

災害前

●防災に関わる女性職員が少ない!

 地方自治体が、地域防災計画の作成や実施の推進のために設置しているのが、地方防災会議です。都道府県と市町村に設置され、地域の防災関係機関が行う防災活動の総合的な調整を担います。

 これは、地方防災会議の委員に占める女性の割合の推移を示したグラフです。

グラフ
内閣府男女共同参画局「I-4-5図 地方防災会議の委員に占める女性の割合の推移」
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-05.html

都道府県・市町村ともに上昇してはいるものの、どちらも未だ1割前後に留まっています。また、全国の約3割の市町村では、地方防災会議の委員に女性が一人もいません。(2016年現在)

 メンバーが住む埼玉県北足立郡伊奈町と朝霞市の事例を見てみましょう。伊奈町では、防災会議委員28人のうち女性は1人で、女性の割合は3.6%でした。また、朝霞市では、39人の防災会議委員のうち女性は3人で、その割合は7.7%と、どちらの自治体も女性の割合が10%を下回っていることがわかりました。職員の女性の割合が、伊奈町で35%、朝霞市で41%であることを考えると、防災会議委員には女性が非常に少ないと言えます。

 つまり、防災の取り組みを行う現場では女性の参画が進んでおらず、多くの自治体の地域防災計画に女性の意見が十分に反映されているとは言い難い状況にあるのです。

●避難所に行けば備蓄があるの?

 自治体が非常食や飲料水、毛布などを備蓄していても、いざという時に避難所に備蓄物資があるとは限りません。自治体によっては、避難所となる施設に備蓄品を置くスペースが確保できなかったり、管理するのが難しかったりするため、避難所ごとに物資を備蓄するのではなく、市役所に一括備蓄していることもあるからです。一括備蓄は物資の管理や入れ替えがしやすい一方、大規模災害で輸送路の寸断が発生した際には避難所に物資を届けることができなくなってしまいます。2015年3月に内閣府が公表した「避難所の運営等に関する実態調査」によると、避難所として指定した施設内に食料・飲料水の備蓄をしていない市町村は30%近くあります。 また、男女共同参画や要配慮者視点を取り入れた備蓄をしていない避難所はさらに多く、42%に上っています。

 つまり、「避難所に行けば備蓄が揃っている」とは言い切れないのです。

 メンバーの住む自治体はどうなっているか紹介します。埼玉県北足立郡伊奈町は小中学校やふれあい活動センター、浄水所、社会福祉協議会に1.5日分の食料を備蓄しており、備蓄場所の一部は避難所に指定されています。そのため、備蓄の分散は部分的ではあるものの、なされています。東京都清瀬市では、市役所に1日分の食料が備蓄されていて、分散が不十分であると言えます。栃木県宇都宮市では、広域避難場所や避難所の近くに防災備蓄倉庫を設置して1日分の食料を備蓄していますが、避難所の施設内には食糧は備蓄されていません。しかし、飲料水は防災備蓄倉庫ではなく、避難所に全て備蓄されています。

食料
備蓄量 備蓄場所 分散備蓄の有無
埼玉県北足立郡伊奈町 1.5日分 避難所、社会福祉協議会ほか
東京都清瀬市 1日分 市役所 ×
栃木県宇都宮市 1日分 防災備蓄庫
・埼玉県北足立郡伊奈町「伊奈町防災計画 第2編 震災対策計画」 https://www.town.saitama-ina.lg.jp/cmsfiles/contents/0000000/386/H27.3bousai.pdf ・埼玉県北足立郡伊奈町「伊奈町防災計画 資料編 図表類」 https://www.town.saitama-ina.lg.jp/cmsfiles/contents/0000000/386/8.pdf  ・東京都清瀬市「清瀬市地域防災計画 震災編 第2部 第11章 備蓄・輸送対策の推進」 www.city.kiyose.lg.jp/s017/010/010/110/211.pdf  ・栃木県宇都宮市「市の防災対策」 https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kurashi/anshin/bosai/1003238.html  ・栃木県宇都宮市 「宇都宮市地域防災計画資料編 震災対策編 第1章 災害予防計画」 https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/239/sinsai-yobou.pdf  ・栃木県宇都宮市 「宇都宮市地域防災計画資料編 資料編 震災対策編」 https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/239/sinsai-siryouhen.pdf 
以上の文献を参照し独自で作成

 どの自治体も備蓄できない分は、事前に協定を結んだ流通業者などから調達するとのことですが、一般的に必要とされる3日分に届いていないことがわかりました。

●自宅に備えはある?

 行政による備蓄には限界があるので、個人で備蓄しておくことが求められています。

 では、家庭での防災対策の実施度はどうなっているのでしょうか?

 住友生命保険相互会社が発表した「スミセイ「わが家の防災」アンケート 2019」によると、防災対策への関心度は上昇している一方、この一年間で防災対策に支出していない人が過半数を超えています。

 つまり、相次ぐ地震や風水害によって、災害を身近に感じ防災に関心を持つ人が多くなったものの、行動に移せている人は少ないと言えます。